粟津潔邸
建築2025/6/30
今年の年初に逝去された建築家 原広司さんの設計された「粟津潔邸」が昨年あたりからギャラリーとして期間限定で公開されています。場所が川崎の住宅街で微妙に行きにくい場所なのですが今回公開の最終日に見に行ってきました。
丘陵地で高低差のある敷地の最上階が玄関となっています。敷地はかなり広いです。
玄関に入ると建物中央に渓谷のような階段と上部のドーム型のトップライト。
階段は上段では奥の部屋への動線確保のため片寄せとなっていますが、下段では階段幅を変えずに中央配置としてずらしていて壁厚分を書棚に利用しているようです。私なら階段巾を拡げてしまうところです。
燦燦と太陽光が降りそそぐ階段室から下の階へ陽の光を下すための光筒のドームが配置されていてこれが原さんらしいところで、当時の建築という雰囲気を感じさせるところです。さすがに室内は暑いですが50年以上前の建物なのでかつてはこんなに暑くなることもなかったのでしょう。
階段室によって二分された左右の細幅の空間(幅は2100くらいありそう)は子供部屋、キッチン、書斎などに振り分けられていてこの巾がなかなか気持ち良いです。
細長い部屋を低い収納で区切って奥に造り付けデスク、十分な広さです。昔、一間巾(1800)のすごく狭い独身寮の部屋で2年くらい住んだことがありますがあれはさすがに息苦しかったです。ベッドに座って反対側の壁(遮音性なし)に手どころか頭が届くような寸法でした。
茶室もあってここは4.5帖+αほどの広さがあります。間取り的にはここも個室と同じ寸法でも良かったと思いますが、茶の間的、ゲストルーム的に使うために広くしたのではないかと想像します。
前後の階段で動線をつくるビーバーの巣的な断面。斎藤豊氏の「ちめんかのや」を思い出します。
同じ川崎で近所にあるはずの、篠原一男氏設計の「直方体の森」が中村和義の美術館として再びオープンしているようですが(一度だけ見たことあります)、渓谷的なスリット上の吹き抜け空間が建物のメインとなっているところや、建物ディテールの一部にも共通しているように思いました。直方体の森の方が竣工年は1年早いそうです。画家の中村和義さんはこちらの建て主のグラフィックデザイナーの粟津潔さんとも深い親交があったようです。