外国人向け賃貸戸建「谷戸坂の家」

設計解説谷戸坂の家2017/9/1

2017年の初めに完成した『谷戸坂の家』の設計について解説してみたいと思います。

場所は横浜の元町中華街駅の近く、港が見える丘公園に向かう坂道の途中で当事務所が設計し2014年に完成したコンクリート打放しの『wedge』とは道を挟んだ向かい側にあります。両建物は建て主が同じであり、今計画は場所柄外国人を主なターゲットとした賃貸住宅を建てたいということでした。

外国人向けということで建物自体はメーターモジュールで少しゆったり目とし、家具や家電なども大型のものが入れられるように想定しています。主寝室には共用の浴室とは別に専用のシャワールームも設け、また2つの子供部屋も広めとしています。第一種低層住居専用地域で北側斜線制限の影響を強く受ける敷地ですがロフトも設け、かつ天井高さもなるべく高くしたいという御要望がありましたので屋根は寄棟屋根と切妻屋根の組み合わせとし、木造ではあるものの「wedge」との統一感を持たせるためにモダンな建物としたいということで屋根には軒の出を設けず、外壁はグレーのカラマツ縦羽目板張としました。軒の出がないので外壁の板材の選択に当たってはメンテナンス性と耐久性を考慮し、断面形状に工夫があって部分的な張り替えがたやすく工場塗装をしっかりしてある板材を選んでいます。

この土地には以前は古民家を利用した千代紙屋さんがあって、観光客の通行も多く一種低層住居地域ではあるものの商業的な利用に向いた土地です。それにも考慮してただの賃貸住宅ではなく将来的には物販やカフェなどの営業にも対応しやすい間取りとして、事務所併用住宅や店舗併用住宅としての需要にも対応しています。


敷地内に駐車スペースを4台分設けていますがそのうち2台は向かいの『wedge』のための予備駐車スペースです。

一階は全て大判タイル張りの土間(床暖房有)としていますが賃貸住宅として利用する際には上足での利用を想定しています。天井高さを確保するため梁は表しとしています。

キッチンは大きなコの字型のキッチン。L字型の一般的なシステムキッチンと造り付造作によるバックセット収納との組み合わせとし、勝手口や階段下収納もキッチンに設けています。

店舗として利用する際などに裏廻りとなる通路部には長い壁面を利用して書棚を造り付けてライブラリーとしました。

2階主寝室の水廻りは広めの洗面カウンターと専用のトイレ、シャワー室を付属。

大きな小屋裏空間を利用して子供部屋の上部は全てロフト(天井高さ1.4m)としているので大量の荷物を置くことが可能です。

幸いにして建物完成引き渡しの前にすぐ外国人家族の方の入居も決まりましたが、立地の良さを活かしたいかにでも対応可能な建物として賃貸収益物件としての人気はずっと衰えないのではないかと思います。