南北に長い箱型の家「辻堂の家」

設計解説辻堂の家2017/9/4

2015年に完成した「辻堂の家」は近年商業施設などの発展が目覚ましく人気のエリア辻堂駅北口の住宅街にあります。土地は南西の角地、もとはほぼ正方形の敷地だったものを2分割して販売された土地で南北に長く、また道路面より既存敷地の地盤が60センチほど高くなっていました。この敷地に夫婦+男の子3人の家族のための家をということで限られた土地(約96平米)をいかに有効に使うかということを考えました。

建物自体は敷地南北に駐車スペースと駐輪スペースを残したシンプルな長方形のプランとして、無駄な動線のない間取りの定石として階段と玄関を中央に配しました。庭はほぼ取れないので眺望の良い2階にLDKを設け2階の東南と北西角の対角位置に外壁のフレームに囲まれたテラスを設けました。男の子3人の兄弟のための部屋は当面は大部屋一つでよいということでしたが、狭いながらも3部屋に分割可能な間取りとしています。敷地の地盤はコスト削減のため既存の高さのまま残して高基礎の道路側部分のみ切土とし、玄関は建物西面中央の開口部内の外階段を数段上がってのアプローチとしました。

建物のデザインはシンプルな箱型の家で北欧的な雰囲気がお好きということだったので、淡いオイスターグレー色のガルバリウム鋼板の横張りの外壁で直方体の建物をつつみました。建物の出隅部分もこの材料ならばシャープに仕上げることができ、屋根の軒がなくとも外壁の耐久性に優れています。

準防火地域なのでアルミサッシの防火制限が厳しいのですが極力ガラスを網入りガラスとしなくてよいような窓のレイアウトを試みています。外壁の一部に設けたアクセント部分の仕上げは杉縦羽目板のウッドロングエコ塗装。1階寝室道路面の庇付きの窓には布団干し用の物干バーも設置しています。

室内の壁の仕上げには施主塗装のポーターズペイントを多用しています。2階LDは天井も高く面積が大きいのでビニールクロスをメインの仕上げとしていますが、3色のポーターズペイントを塗り分けています。

2階の上にはさらにロフトを設ける当初プランだったのですが、工事費調整のためそれは断念しその代わり2階LDは天井高さを全面3mと高くしています。天井からぶら下がっているのは工事途中で追加したぶら下がりロープ。内装については建築を学んだ経験もある奥様にて家中を一貫してセンス良くまとめて頂きました。

2階に2つ設けたインナーテラスのうち、南側はおもに物干専用となっていますが、北側のテラスはLDから少し距離をとったキッチンと対面していて、キッチンカウンターとテラス間には大きな窓を設けてあるので、テラスから見ればちょっとした屋台風の面白いキッチンとなりました。シンプルな家なのですが窓とテラスの取り方はなかなか特殊でそれがこの家の特徴となっていると思います。