通り土間がクロスする家「逗子桜山の家」

設計解説逗子桜山の家2021/11/30

新コロナ禍が始まる直前の2019年末に完成した「逗子桜山の家」。計画地は逗子海岸が目と鼻の先のような場所で、古い大きなお屋敷が建っていた敷地内に新たに私道を通して3宅地に分割された土地の中央の宅地。海側には3階建ての住宅が建ち並んでいて家から海を眺めるには建物をかなり高くしない限り難しく、建て主さんが希望したのは海を無理に望むのではなく南側の山の風景がきれいに見えるような2階建ての家でした。またご夫婦+小学生のお子様一人の3人家族の建て主さんご一家はこの新築以前から近所にお住まいで、釣りなど海のレジャーを思い切り楽しめるような家となることもご要望の一つでした(長期優良住宅の認定も受けています)。

3宅地で共有する私道の前面道路は南側。南側の山の風景が綺麗に見えるように2階リビングを選択しました。駐車スペースは1台+芝生の上に予備駐車スペース1台。

南道路の場合は採光を活かすために外観が窓だらけでデザインが難しくなりがちですが、一般的なアルミサッシの掃き出し窓を使って玄関ドアや雨戸の戸袋、テラスの手摺に木材を使い軒を深くとることで、自然素材の柔らかさと陰影のある立体感を出しています。外壁はモルタル+ジョリパット仕上でコーナーを丸く面取りしています。また植栽の花壇や敷石には元の敷地の擁壁に使っていた鎌倉石を再利用しています。鎌倉石も今や貴重だそうです。

1階の中央に土間が貫通していて北側の庭スペースまで一直線に見通せるようになっています。この通り土間を挟んで主寝室と子供部屋+水廻りが配置されています。

玄関の前のポーチにはもう一つの通り土間がクロスして設けられていて、レジャー用品などのための倉庫が離れ的に設けられています。倉庫には手動シャッター。

倉庫の横には厨房用の流し台を設けて、御主人が海で釣った魚(SUPに乗って釣ってくるそうです)をそのままさばけます。厨房前にはお子さんの描いた魚の絵を焼き付けたタイルを張っています。

通り土間からアクセスする主寝室は奥様が将来この部屋を書道教室としても利用できるように和室としています。

この和室には縁側を設けて南側の庭から直接出入りできようにしました。

1階はこの通り土間(建て主さんからの提案)によって分断されていてサンダルで行き来する必要があり多少不便なのですが、将来的に一部板の間とすることで簡単につなげられる余地も残しています。

1階の洗面脱衣室+浴室は外部の通り土間から直接アクセスできる位置にあります。

2階のLDK。南側を大きな掃き出し窓として山の眺望と日照を存分に取り入れています。窓には最適な長さの軒庇も出ているのでパッシブソーラーの恩恵がかなり期待できます。

2階LDのメリットを活かした勾配天井のLDK。天井の低い部分には一部小屋裏収納も設けています。

1階倉庫の上部を利用した広い2階テラス。

キッチンは造作家具で作ったアイランドキッチン。小部屋のパントリーも付属しています。

LDと続き間とした客間の和室。和室を設けることは最近少なくなりましたがこの家には2部屋も和室があるのです。シナ合板の大きな引き込み戸でLDとは仕切れるようにしています。畳はフローリングより少し高くしていて一部に掘座卓の書斎スペースも設けました。

コレクションしていたマグネットを飾れるようにトイレの壁一部はマグネット下地ボードとしてみました。

シンボルツリーはジューンベリーとサルスベリ。海に近いこの場所にふさわしい内と外があいまいにつながった明るい家となりました。派手でもモダンというわけでもないですが、何年たっても飽きの来ないような家だと思います。