三角敷地の高台から眺めを楽しむ家「東逗子の家」

東逗子の家設計解説2023/2/27

2020年7月に完成した「東逗子の家」。計画は新コロナの始まる前に始まって工事中に新コロナが始まるというタイミングでの計画でした。今思うとコロナが始まってからウッドショック、湘南移住ブームで土地価格上昇に円安にウクライナ危機で建設物価の高騰など家を建てるマイナス要因となることが立て続けに起こっているので良いタイミングだったと思います。

建て主さんは御夫婦+小さいお子様二人の4人家族で土地探しから相談にのっていましたが都内勤務も便利な逗子あたりで土地探しをしていました。ある日建て主さんが見つけてきたのがこの土地でJRの駅からは徒歩3分だけれど急な坂をかなり上る高台。急な崖を含んだ敷地で敷地面積は約800平米もあるけれど敷地として使える平坦地はそのうちの250平米程度、それも変形した三角形という特殊な土地でした(坪単価で考えると破格に安かった)。自転車では絶対登れない急な坂(電動自転車なら何とか可能)なのを私は心配しましたがで建て主さんは全然平気そう。結局私も現場に通ううちにこの程度の坂道なら全然平気だと感じるようになったのですが。。

それよりも御夫婦ともこの高台からぐるりと見渡せる山の景色がすごく気に入ったようで、聞いてみると育った家がこういう感じののどかな場所だったということでした。私の方では土地の契約前にまず敷地内の崖の具合を確認した後に、この土地で安全、快適に住める家のラフプランを作成しました。そのラフプランを気にって頂いたようですぐにそのまま土地のご契約をして頂いてほとんどそのラフプラン通りの家が建ちました。


20m近い高低差のある敷地内の急傾斜のがけは土質は岩盤なので(平坦部分も少し掘れば硬い岩盤)自然に崩れるということはなさそうですがやはり安全側となるように、新しく建てる建物はなるべく崖から離すように配置し、直角に交差するL型となった建物の崖に近い方の棟は平屋としました。以前にこの土地には崖近くに迫って2階建の家が建っていたのでそれよりも大分安全な家になりました。

上記の理由もあって道路に面した南側の棟は平屋としたので、敷地の中央に設けた広いウッドデッキに対して日当たりを確保するうえでもとても有効となっています。また平屋とすることで建物の圧迫感が軽減され、先に建っていたお隣の家の眺望に対してもあまり邪魔になっていないのではないかと思います。

敷地前面に駐車スペースは2台分を余裕をもって確保。自家用で必要なのは1台だけですが前面道路が広くない上に坂道で曲がりくねっているので路上駐車は不可、コインパーキングもないような場所なのでやはり2台分は必要です。外壁は黒い焼杉を縦張り、アクセント的に玄関ドアの木製建具(米松)や軒裏(杉)はクリア塗装としています。

L型の建物の交差部に玄関があるので平屋+2階建という建物の広さの割には建物内の動線は小さいので建物を有効に使うことができます。また玄関から入ると目にするのが正面の絶景というのもなかなかよいものです。また玄関には広めのシューズクロークと通用口も別ルートで設けています。



1階にはLDKの他に水廻りと主寝室を設けていますが、玄関からキッチン、水廻りへと至る動線がコンパクトに集約されているのは主婦的な目線からはかなり便利かと思います。それと1階に設けた浴室には既存の桜の木を眺めように狙った窓も設けています。

平屋の棟の中はLDK。勾配天井+梁も表しとして開放的な空間としました。

LDには廻りを取り囲む山の眺望を見るための大きな掃き出し窓と広いウッドデッキを設けています。


道路のある南側も当初掃き出し窓にする予定でしたが、ものがあまり置けなくなってしまうこととプライバシー確保の点から腰高窓+障子としました。内壁は全て白い紙クロス張としています(汚れたら上から塗装可能なものです)。また高天井を利用して液晶プロジェクターを吊っています。


LDと同じくらいの広さのある広いウッドデッキが平屋と2階建部分とつないでいます。変形敷地ならではで生まれた気持ちの良い空間です。掃き出し窓部分には奥行き深めの軒も設けてあるので梅雨時の通風、物干しにも便利で、心地よい日影があることでこの半屋外空間がさらに有効に使えることと思います。


2階には小さめの子供部屋2室と共用のワークスペースを設け、廊下には家族共用のクローゼットと水廻り、ちょっとしたソファコーナーを設けています。

逗子の山側の土地ですが2階からは山の間からほんの少しだけ海も見えます。

たまに出くわす三角形の敷地ですが、これくらいの敷地面積の余裕があれば特に建物を変形させることなくこのようなL字型の開放的な家とすることができます。四角いきれいな土地と比べてもうまい具合に敷地の余剰部分が利用できれば、きっちり、かっちりではなく、「抜け」や「遊び」のある楽しい空間が作りやすいようにも思います。特にこの土地に関しては高台から見渡せる山に囲まれた眺めが最高ですね。この土地を選ばれてとても良かったと思います。奥様も趣味の園芸を存分に楽しまれているようです。